「わるい空想」ツアー 振り返って                           上之蛭子

こんばんは。ひるこです。

遅ればせながら、ツアーファイナルが終わりました。たくさん遊んで下さってありがとうございました。すごく楽しかったです。

【わるい空想】ツアー全日程を振り返り、おれが感じたものを少しでも皆さんと共有できたらと思います。

 

8/5北海道 161倉庫

真夏の北海道は暑くないと思ってた。実際湿度も低く爽やかだった。でも161倉庫は地下室でしかもソールドアウト、暑くてカビ臭くて、何処でやっても蛸地蔵っぽいなぁとツアーは始まりました。

立ってるだけで朦朧とし、部屋に反響した自分のディレイはアランヴェガの姿をしていました。それでも骨の太い、乾いた、いつもの音、でおれらの意識は保たれ、1音出すごとにクリアになります。北海道の奴は特に真っ直ぐなストレートを弾くので、とてもやり甲斐がある、楽しいぶつかり合いでした。シャウトがデカすぎてマイクを壊しました。終わった後みんなで花火をしました。夏の匂いがしました。

 

8/10東高円寺U.F.O.CLUB

レコ発イベント。きんらんどんす。金襴緞子とは、好きな丸尾末広さんの作から取っています(余談だが平凡と明星、も少女椿の作中にある)。でも丸尾末広さんの作品が好きだ、とイーのイチバンに挙げるような奴は嫌いです。同族嫌悪ですけど。それでも安直な気がするからです。N.D.G.から犬神サーカス團と出順を組んだのは逃げられない地獄を作りたかったから。思惑通りみんな洗濯機の中の糸くず状態で、顕示欲やステータスはぶっ飛んでみんながみんな渦巻に巻き込まれていくの、楽しかったですね。その中で音に溺れてくの、日頃音やバンドに抱いていた【わるい空想】が現実に表れた瞬間だったと思う。

 

8/20難波ベアーズ

憧れのニプリッツをゲストに、ワンマンショウをブッ込みました。先にも触れた通り、曲を演ることに対する自分の【わるい空想】を体現できた一方で、このツアーを通して自分の夢、憧れといった【わるい空想】もどんどん叶えていってあげられたと思います。一緒に音を出すことで自分達の音や表現力の可能性をさらに深く感じることが出来たし、ニプリッツのステージでそれを教示・啓示してもらったようでした。ニプリッツは大好きだけど、ニプリッツのようになりたいとは思わない。自分の憧れに勝つには憧れを倒すしかない。勝つとか負けるとかの審判は自分自身で、ヒーローにビビってたら誰かのヒーローになるなんか無理だよってこと。自分の夢は自分自身しか叶えてあげられないよ。

 

8/21名古屋栄spazio rita

ミラーボールズもまた、おれの憧れの大好きな二人です。音源は18才くらいの時には聴きまくっていたし、今でも夜中に隣にいてくれる音楽の一つ。

イベントスペースという、ライブハウスとは少し鳴りの違うところだったのだけど、二本のギターが反響しあって「おれの頭の中で夢想するミラーボールズ」の音がそのまま聴こえてくるようでした。演奏者として心の一番柔らかい部分を暖められ、自分達の出番では今までにやったことのないアレンジをその場で組み上げていく挑戦を貪欲に取り組むことができました。【逆さまの海】などを、曲の展開のみをルールとしてリズムやアクセント、プレイもイチから作り上げるのはすごく緊張感があるし、楽しい。表現力ギリギリに踏み込み、勇気や審美眼を試してあげることでそれが見えました。許さない。許す。

 

9/16大分ATHALL

9/17福岡四次元

盟友Bellbottom from 80'sと数年前から作ってる遊び場【奇天烈ロックパーティー】で、今回は大分のユカちゃんも手伝ってくれツーデイズとなりました。

九州のカウンター・サブカルチャーは大阪東京と比べれば当たり前だけど小さい。でも小さいながらもそれを楽しむ人がいて、欲している人がいる。おれらや江口くん(a.k.a.BF80、蛸地蔵PV製作)はそうした人の遊び場を作りたくて、来るもの拒まず、年々遊び仲間(東京では、お客さんと言う)が増えています。仲良しだからこそ本気でやり合ってくれるバンドで集まって、好き放題唄う。奇天烈ロックパーティーは出演者にとって、馴れ合いじゃない本気を、久しぶりに見せ合う場所です。みんな強いけどうちがぶっちぎりに勝利だったと思ってる、おれは負けず嫌いなので。たくさん聴かせてもらえた分たくさん鳴らしました。それが二日間もみんなに遊びに来てもらえて、遊び場にしてもらえて嬉しかったです。ありがとうー。

 

10/15難波ベアーズ

ツアー下り開始。今回は東京でできた友達のバンドを連れて行きたかったし、何より座敷くんともう一度バンドでやり合いたかったんです。「いつもの」ベアーズで「いつも通り」ベアーズはいかがわしく、変わらず危なくて楽しいバンドがやっているところを、いま蛸地蔵を見ているみんなに見せられたなと思います。おれのライブやバンド観、はっきり言ってクズな自分がそこでは非日常に触れ「特別」になれる空間、普通の友達には言えないことが言える友達、そこでしか会わないけど普通の友達より心置きなくいられる友達、そうした仲間と秘密の地下室で共有する自分達しか知らないバンド…上手いことやれなくても自分がオッケーなら他人とかカンケーないじゃん胸張んなよって、ここで遊んでて誰かに言われたわけじゃないけど、思えました。

 

10/16

翌日のバックビートは昔の古巣でありライブ活動を始めた場所であり、音楽の素敵さを実感した場所であり、初めて友達といえる仲間ができた場所であり。ベアーズとバックビートはおれにとってそういう場所です。シークレット出演という立場を頂いて同窓会をぶっ壊しに行きました。辞めてしまったやつのが多かった気がする、けどおれらと同じくまだやってるやつがいて、形が変われどやってるやつもいて、だからこそ懐古的にやりたくなかった。懐かしいなーで楽しまれるぐらいならイマやってる意味ないし。あくまでツアーの中で新しい夜を過ごしました。マリィくんは初めての神戸だったけど、すぐ歓迎してもらえてよかったね。同じ匂いがする同士、すぐ仲良くなるだろうなと思ってた。みんなそう。正しい息をしたい者同士です。生存確認。お互いのペースでやり尽くそう。

 

10/23新宿JAM

サミー前田さん(ボルテイジレコード社長)のイベントへ出演しました。ツアーを経て得たものが自然と発生して、音の波を一層高く速く深く届けられました。蛸地蔵は昭和歌謡の感じとはどんどん変わってきています。が、でもそれを成長だと思えてます。もっと前へ行きます。サミーさんこれからも遊びましょう。

 

11/13沖縄Gシェルター

久しぶりの沖縄、Tシャツ一枚、夏の果て。

リアルタイムアレンジに加え、【わるい空想】以降に作った新曲を2曲演奏し、純度の高いライブができました。約束通りのライブはしたくない。演奏が上手いとか下手とかどうでもよくて、純度の問題。新しさに対してどうチャレンジしていくか、音に対して自分たちが拓いていこうとしています。いつも通りの非日常です、同じ日は二度とない。

 

11/28下北沢シェルター

ツアーファイナルで力んだりするのかなと思いましたが、すごくあっけなく終わりました。満員のフロアをぼんやり眺めながら終わりの実感はなく、ただただ音楽をするのに夢中でいました。沖縄で撃った新曲に加え、【わるい空想】のアレンジを披露しました。このツアーの集大成というと何かダサいですが、自然にそうなっていたと思います。イマの蛸地蔵の姿がこういう形をしていて、そこに無理はなく、チャレンジと発見を楽しんでいました。上で書いてきた通り、このツアーで得たものはおれらの言葉よりも身体に、感覚に染み込むものだったので、シェルターに遊びに来てくれた皆に音でそれを伝えられた実感がありつつも、物足りなさを覚えました。物足りなさとは、つまりツアーファイナルの時点ですでにおれには次が見えたからです。いま、ファイナルで披露した新曲の他にも新しい曲がどんどん出来ています。曲という具体的な形に出来てくると、やりたいことも必然と具体的になって、おれらの前に進むべき道を示してくれます。相変わらず舗装路ではなく獣道ばかり提示する蛸地蔵だけど、獣道を抜けると清い川があったり、綺麗な花や土のいい匂いがしたりして、楽しいなと思います。人生の価値は、感動の多さだとおれは思う。目的地はまた遠くなったけど、道草キめてなんぼです。

 

死ぬほど普通のふりをするのが上手になって、麻痺しちゃったまま年老いて手足も痺れ出したらもう残された時間はわずか、なんてすごく焦るじゃないですか。いままで何やってきたんだろうって。10人いれは10人分の普通があって、それぞれ他人からすると全部が特異で変だけど、言い換えるなら特別、なはずなんです。ネガティブな言葉を使うかポジティブな言葉を使うかだけでしょって思うかもしれないけど、使うんだったら断然後者のほうが気持ちいいです。普通が特別。特別が普通。誰かの特別に音楽で勢いを付けられたら素敵だなと思うので、もっともっと面白おかしく、真面目に、ロックの壁に頭を打ち続けようと思います。おれらはロックな人間ではないし、ましてややってる音楽は現在の世間の指すロックではないですが、ロックであることはロックではないことと信じているので、来年も塞がれた蓋をひっくり返していきます。

2016年ありがとうございました。

2017年も蛸地蔵をよろしくお願い致します。

最初のライブは、遊び場U.F.O.CLUBから。1/5、みんなで遊びましょう。来るもの拒まず。君もおれらの仲間です。

 

蛸地蔵 上之蛭子

HP更新履歴

☆DISCOGRAPHY☆

 3rdアルバム『わるい空想』¥2300

 カセットep『青いうてな』¥1000

実況録音盤『金襴緞子』¥2000

 

2ndアルバム『幻の巣箱』税込¥2700

1stアルバム『あなたの絶頂に蛸の脚を貸しましょう』 ¥1600